著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.425-445, 2018 (Released:2018-10-18)
参考文献数
67

本講演の目的は、ここで<格子>と<波>と名付ける二つの社会関係のモードを論じ、それら がどのような形で国家による統治やナショナリズムに関わるのかを考察することである。一方に、 <格子>モードとして、生者を「生ける屍」に変貌させるアーカイヴ的統治が認められる。それは、 たとえばベルティヨン・システム、現地人の身体計測、アウシュヴィッツにおける収容者の管理方 法という形で現れている。他方に、<波>モードとして、隣接性と身体性の密な人間関係が想定で きる。そこでは、おしゃべりあるいはオラリティ、風や水などが重要な役割を果たす。つぎに、ナ ショナリズムとの関係で<波>モードが特徴的な小説とアート作品を取り上げる。まず、ナショナ ルな物語に回収されることに抗する個人的な経験を水や音、意味の取れない発話などで表現する沖 縄の作家、目取真俊の小説を考察する。つぎに、死者を追悼するモニュメントに対比する形で、風、 ロウソクの炎、影、ささやきなどを利用するボルタンスキーの作品を紹介する。そこでは名前をつ けること、心臓音を集めるといったアーカイヴ的活動が重要になっている。ボルタンスキーの作品 はアーカイヴァル・アートの代表と評価されているが、それは国家によるアーカイヴ的統治に寄与 するというよりは、撹乱するものとして位置付けることが可能である。さらに、自己アーカイヴ化 とも言える私的蒐集活動に触れる。

言及状況

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次の日曜に某所で「ファッショナブルな身体:接触・増殖・移植」というタイトルで発表します。2017年の学会講演「格子と波とナショナリズム」以来のアイドルネタから始めます。今回はPerfume Live 2022 polygon waveです。考えてみればpolygon(多角形)も格子の一種ですよね。 https://t.co/d9kzBFj3ev
東京某所で聴く中国語版Love Trip(AKB48 Team SH 愛的旅程) 。しかし、MVはオリジナルほど凝っていない。オリジナルMVの分析については、拙著「<格子>と<波>とナショナリズム:巨大な遺体安置所でLove Tripを聴きながら考えたこと」参照。https://t.co/FHjup40BTr  https://t.co/HsfIdvIC1Q
川田先生、おめでとうございます。私の講演「格子と波とナショナリズム:巨大な遺体安置所でLove Tripを聴きながら考えたこと」では、先生のお仕事を生かしたかったのですが、うまくいかず。https://t.co/d9kzBF0U0n https://t.co/sFeS0eU3S1
クリスチャン・ボルタンスキー。パリの「人類博物館は私にはたいへん重要でした。・・・写真の野蛮人は、明らかに死んでいたのです。彼が握っていたものも もう無用でした。人類博物館は巨大な遺体安置 所に思われました」拙稿「<格子>と<波>とナショナリズム 」よりhttps://t.co/d9kzBF0U0n https://t.co/wb1VuOPvHf

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