著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.044-063, 2022-06-30 (Released:2022-12-08)
参考文献数
39

本論は、沖縄県名護市辺野古の基地建設の進行に伴って、熾烈化する抗議行動の最前線で、心身に傷を負い、抗議に行けなくなった人びとが、新たに勝負できる領域を模索するなかで見出した、〈生き方としての基地反対運動〉とでも呼びうる動きを積極的に掬いあげる。現在生まれつつあるのは、狭義の政治運動におさまるものではなく、むしろ、政治の限界(代表政治と直接政治の双方の限界)を踏み越えて、〈生き方〉そのものとして展開される基地反対運動である。日本政府の暴力により、従来の運動の限界に立たされた人びとは、これまでの闘い方とは異なる形で、自らの生き方を通して変革の方途を切り出していく。それは、生活を丸ごと抱き込んだ運動の全面化であり、自らの生き方の社会運動化、とでも呼びうるものである。本論では、従来の「政治運動」で傷ついた人びとが、口にするようになった「これは、政治じゃない」という言葉に耳を傾け、基地反対運動を「非政治化」し、より広い領域を巻き込みながら、自らの〈生き方〉として展開する新たな基地反対運動を理解することを目指す。さらに本論では、ここでの生き方を、人間のみに限定せず、他の動物たちの生き方をも含み込むものとして、より広く捉える。そこから、基地建設によるかつてない規模の破壊によって、改めて交差する人間と動物たちの生を捉える視座を築いていく。

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