著者
緒方 康介
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-20, 2010-08-25 (Released:2017-09-30)
参考文献数
27

本研究の目的は児童相談所で出会う身体的虐待被害児における知能の偏りを調査することである。児童相談所のケース記録から抽出された身体的虐待群58名と,マッチング法により性別(男児41名,女児17名),年齢(月齢139カ月),全検査IQ(平均86)を統制された対照群58名のデータにおけるWISC-IIIの下位検査プロフィールを比較分析した。まず身体的虐待群の全下位検査評価点がノルムよりも低いことを1サンプルのt検定で確認した。その後,多変量分散分析によって10の下位検査における全体的な群間差が検出された。つづいてボンフェロニーの修正を施したpaired-t検定,ロジスティック回帰分析,判別分析の結果,いずれにおいても絵画完成と絵画配列における群間差が示された。対照群に比べて身体的虐待被害児は,絵画完成課題で高く,絵画配列課題で低い評価点であった。最後に全下位検査評価点の平均値と2つの下位検査評価点を比較すると,身体的虐待群で絵画配列が低く,対照群で絵画完成が低いという有意傾向が得られた。本研究知見の臨床実践上の意義について,身体的虐待被害と絵画完成および絵画配列に関する知的能力との関連,身体的虐待と非行との関連という観点から考察した。

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