著者
田川 薫
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.141-159, 2020 (Released:2022-09-20)
参考文献数
149

自閉スペクトラム症(以下,ASD)児が不適切な養育,特に身体的虐待を受けるリスクは定型発達児よりも高く,知的障害を伴わない高機能児では時に深刻な虐待被害が報告されている。近年,親が不適切な養育行為に至るプロセスや親の認知リスク要因に加え,それらと子ども側の要因の相互作用を明らかにする重要性が指摘されている。そこで本稿では身体的虐待における社会的情報過程モデル(SIPモデル)を参照し,子どもの行動に対する不適切な帰属,不適切な発達期待,不当な適応評価という親側の認知リスク要因と,これらに影響を与えうる子ども側の特徴について先行研究を概観した。そして子どもの行動タイプ,問題行動の深刻さ,障害の有無・種別が親の認知リスク要因に関連しうることを整理した。これらをもとにASD児の特徴と親の認知リスク要因の関連についての仮説モデルを提唱した。ASD児の場合,その疫学的な特徴に加え,非定型的な行動パターンや問題行動の深刻さが親の否定的な帰属を引き起こし得ると考えられた。高機能児の場合はこれらに加え,障害のわかりにくさ,認知・適応能力の凸凹・個人差が大きいことから,親が子どもの特性を障害として捉えづらく否定的帰属が抑制されにくい可能性,適切なレベルの発達期待を見極めるのが難しい可能性,適応評価が不当に低くなりやすい可能性が考えられた。最後に今後の研究の課題と展望を述べた。

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@carol112222 @nazn_a @kumi70jp また、ASDなどの障害児であることによって、親が子供に虐待をしてしまうことがあります。 育児にかける時間や療育費も健常児よりも多く求められるので、現実的な家庭環境として障害児の可能性が高い場合は子供を作らない。という選択肢は「差別」ではなく一つの価値観です https://t.co/ws0UnlhwAh
https://t.co/YqPMdiuOIC >一定の時期になると、あえて相手が嫌がることを繰り返して楽しむような行動が見られることも >相手が嫌がる事を繰り返す行為は、自分の行動に反応する存在として他者を認識できるようになった頃に >その因果関係を楽しむというASD児特有の対人遊び

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