著者
高井 直美 高井 弘弥
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.20-30, 1996-08-01 (Released:2017-07-20)

本研究では, 生後2年日の1人の子どもが, 日常生活において身ぶり動作と音声言語を発達させる過程を, 詳しく観察した。そして, 初期シンボル形成における身ぶり動作の意義と, その消失の理由を明らかにしようと試みた。その結果, 1歳3カ月半ばを境にして, 身ぶり動作の質的な変化が観察された。前期では, 対象の名前を表す身ぶり動作が多く出現したが, 後期では, 対象の状態や動作を表す身ぶり動作のみが出現した。また, これらの対象の状態や動作を表す身ぶり動作では, 後期には, 音声言語を伴って出現する傾向が見られた。さらに, 後期にはもとの状況から離れた状況でいくつかの身ぶり動作が使用されていることが観察されたが, その場合も音声言語を伴うようになっており, このことから, 脱文脈化の過程と音声言語の出現との間に何らかの関係があることが示唆される。対象の状態や動作を表現するもののうちのいくつかでは, 最初は身ぶり動作のみで表現していたものが, 多語発話になることをきっかけに, 身ぶり動作を伴わずに音声言語のみで表現するようになってきた。このことから, 身ぶり動作が消えていくにつれて, 音声言語での文構造が発達している様子が窺える。

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@saho_bofffff https://t.co/kA7RAUjMKQ こちらの論文でも、多語発話のタイミングで音声優位になる旨の報告がされていますね。聴者の場合その人の視覚や他の特性に関わらず音声優位になるのはそうであるようです。ただ第二言語習得だと別の研究になるかもですが...

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