著者
植阪 友理
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.80-94, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
41
被引用文献数
27 17

自己学習力の育成には, 学習方略の指導が有効である。中でも, 複数の教科で利用できる教科横断的な方略は, 指導した教科以外でも活用できるため有用である。指導された学習方略を他の教科や内容の学習に生かすことは「方略の転移」と呼べる。しかし, 方略の転移については, 従来, ほとんど検討されてきていない。そこで本研究では, 方略の転移が生じた認知カウンセリングの事例を分析し, 方略の転移が生じるプロセスを考察する。クライエントは中学2年生の女子である。非認知主義的学習観が不適切な学習方法を引き起こし, 学習成果が長期間にわたって得られないことから, 学習意欲が低くなっていた。このクライエントに対して教訓帰納と呼ばれる学習方略を, 数学を題材として指導し, さらに, 本人の学習観を意識化させる働きかけを行った。学習方法の改善によって学習成果が実感できるようになると, 非認知主義的学習観から認知主義的学習観へと変容が見られ, その後, 数学の異なる単元や理科へ方略が転移したことが確認された。学習方略を規定する学習観が変容したことによって, 教科間で方略が転移したと考えられた。また, 学習者同士の教え合いが多いというクライエントの学習環境の特徴も影響したと考えられた。

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第1章第2節を読んで。 次の論文2本を読みたい。 https://t.co/cBVVX6yWbm https://t.co/1CkaZcU1PN
非認知主義的学習観と認知主義的学習観。 学校での授業を含む教育活動が、非認知主義的学習観だらけならば、必然的に学校教育は忌避されて当たり前なのかもしれない。 https://t.co/rS8vCHbc8u
こっちは、けテぶれ氏@barikiiちょっと読んでみてほしいw たぶん自分の実践思い出しながら読んだら5分で読めるw 学習方略は教科間でいかに転移するか https://t.co/sge0RhmYhg
某友人に送りつけた論文。 送りつけて自分が読まないのもアレなので、サラッと流し読みした。面白かったです。みなさんも良ければどうぞ。 学習方略研究の展開と展望 https://t.co/T3zxYPlBYD 学習方略は教科間でいかに転移するか https://t.co/sge0RhmYhg
コンテンツとコンピテンシーのこと考えてて、学習の転移について悩むに至ったんですが、オススメの論文or教科書ありませんか… とりあえず適当にググって出てきたやつ読みます https://t.co/2b5HNsEcZY
https://t.co/w03s3or04r これもものすごくおもしろい。 学習方略の現場における研究は市川先生一派がすごい。 メタ認知のアプローチとは似てるけど、視点が違う。
植阪友理 (2010).「学習方略は教科間でいかに転移するか」『教育心理学研究』https://t.co/0O7DQ9bxxE

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