著者
保田 幸子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-13, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
43

研究成果を報告する科学論文では,「I やWe の使用は避ける」,「曖昧で冗長な表現は避ける」といったディスコースが推奨され,現在もアカデミック・ライティング授業や論文作成ガイドの中で指導されることがある.しかし,このアカデミック・ディスコースはいつどのように誕生したものなのか.なぜ特定の語られ方に権威が与えられるようになったのか.この権威は21世紀現在も変わらず固定的なものなのか.これらの問いについては国内では十分な検証が行われていない.本研究は,こうした通説を再考すべく,科学論文において客観性が求められるようになった歴史的背景とその後のパラダイムシフトを明らかにするとともに,21世紀型の科学論文において書き手がどのように読み手を導いているか,その主観性の表明技法を明らかにすることを目指す.得られた成果を元に,科学論文執筆に迫られた学習者層に対する21世紀型の高年次英語教育支援のあり方について提案する.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (2 users, 2 posts, 3 favorites)

J-STAGE Articles - 科学論文における主観性:アカデミック・ディスコース概念の再考 https://t.co/Yf4SH7Tgu3
https://t.co/TkGDRwmP52 ・科学論文では「客観性を出すために一人称の使用は避ける」という伝統的な規範があった。 ・ここ50年で一人称を用いた文章の頻度が高くなった一方,断定度を下げて結果を報告する風潮に変化。 ・一人称と伝達動詞の組み合わせで,結果に対する確信の度合いを調整している。

収集済み URL リスト