- 著者
-
辻本 雅之
峯垣 哲也
西口 工司
- 出版者
- 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
- 雑誌
- 日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.3-13, 2012 (Released:2018-04-02)
- 参考文献数
- 28
本総説では、末期腎不全患者(CKDグレード5)における肝消失型薬剤の予期せぬ薬物動態変動に対して注意喚起を促すために、末期腎不全患者においてバイオアベイラビリティの増大や肝クリアランスの低下と言った腎外クリアランスの変動を生じる事例について紹介する。
具体的には、末期腎不全患者において、
1. バイオアベイラビリティ増大の可能性について、プロプラノロールおよびプラバスタチンの事例について示す。
2. 肝代謝阻害の可能性について、ロサルタンおよびワルファリンの事例について示す。
3. 肝取り込み阻害の可能性について、エリスロマイシン、フェキソフェナジンおよびジゴキシンの事例について示す。
4. 腎外クリアランスの増大の可能性について、CPT-11の事例について示す。
5. 特異的に生じる薬物間相互作用の可能性について、コルヒチン−クラリスロマイシン間およびジゴキシン−フェキソフェナジン間の事例について示す。
以上の事例から、末期腎不全患者においては、単に腎機能低下に伴う薬物投与設計では不十分な場合があり,薬剤または/および患者によっては、バイオアベイラビリティの増大、肝クリアランスの低下、腎外クリアランスの増大、薬物間相互作用の顕在化などに注意する必要がある。