著者
葉山 雅広 由井 正敏 今井 正
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.297-310, 2014 (Released:2015-04-28)
参考文献数
55
被引用文献数
1 1

1990年から2008年にかけて山形県でクマタカ Nisaetus nipalensis の繁殖状況を調査し,ブナ Fagus crenata の種子生産の変動とクマタカの繁殖結果との相関の有無を検証した.そして,繁殖結果と環境要因(林相,林縁の複雑さ,前年の繁殖結果,降雪量など)との関係を明らかにするため一般化線形混合モデル(GLMM)を用いた.繁殖結果と環境要因との関係の解析では,ブナの結実状況の違いによって繁殖結果に影響する環境要因に違いがあるのかを検証するため,次の三通りの解析を行なった:(1)結実状況が良い場合,(2)結実状況が悪い場合,(3)結実状況による区分をしない場合.結果は,前年のブナの結実状況が良い場合には繁殖成功率が統計的に有意に高かった.しかし,繁殖結果に最も関連していた要因は前年の繁殖結果であった.天然林が占める割合が高い本調査地では,GLMMによる解析はブナの結実状況が悪い場合には繁殖結果に対し天然林面積が負に,人工林面積が正に作用する傾向を示した.繁殖結果に影響する要因は前年のブナの結実状況によって異なっており,これはクマタカが採食環境と主な食物とする種の両方かまたはどちらかをブナの種子の豊凶に応じて変化させていることを示唆している.

言及状況

外部データベース (DOI)

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>繁殖を可能にする最も重要な要因は産卵前のメスの体重で,冬と春の食物量が産卵の有無に影響する. そのため,数年に 1 度程度生じる並作や豊作では,結実がほとんど無い場合に比べて相対的に産卵前の食物条件が改善され,産卵する営巣地の割合が高かったと推測される https://t.co/bDP8z4nOXn です https://t.co/riGNdFTnZm

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