- 著者
-
松田 茂樹
佐々木 尚之
- 出版者
- 日本家族社会学会
- 雑誌
- 家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.169-172, 2020-10-31 (Released:2021-05-25)
- 参考文献数
- 9
東/東南アジアの先進国・新興国/地域は,いま世界で最も出生率が低い.この地域の少子化の特徴は,出生率低下が短期間に,急激に起こったことである.低出生率は,各国・地域の持続的発展に影を落としている.欧州諸国で起きた少子化は,第二の人口転換に伴う人口学的変化の一部として捉えられている.しかしながら,現在アジアで起こっている少子化は,それとは異なる特徴と背景要因を有する.主な背景要因のうちの1つが,激しい教育競争と高学歴化である.この特集では,韓国,シンガポール,香港,台湾の4カ国・地域における教育と低出生率の関係が論じられている.国・地域によって事情は異なるが,教育競争と高学歴化は,親の教育費負担,子どもの教育を支援する物理的負担,労働市場における高学歴者の需給のミスマッチ,結婚生活よりも自身のスペック競争に重きを置く物質主義的な価値観の醸成等を通じて,出生率を抑制することにつながっている.