- 著者
-
山田 昌弘
- 出版者
- 日本家族社会学会
- 雑誌
- 家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.11, pp.49-57, 1999-07-31 (Released:2009-08-04)
- 参考文献数
- 14
今、家族社会学者は、「なぜ親は子どもを育てるか」という問いにとりくまなくてはならない。ヘーゲルは、近代社会における子育ての原型を論じた。彼は、親子関係が子の成人後に消滅するということを強調し、近代的子育ての二つの性格を導いた。一つは、親はもう子育てに、経済的効用を見出すことができないため、意味を見出すことが求められ、子育ての主要な動機付けは、愛情になるということである。もう一点は、親子の愛が未完成であるということで、その結果、親は、愛情の存在を信じることができた。近年の長寿化と「学校化」によって、親にとって子育ての意味付与の危機がもたらされる。親子関係に愛情があると確信するためには、成人後の子や学校システムなど公共からの評価が必要になるからである。その結果、親は、子育てにプレッシャーを感じることが多くなる。それゆえに、親は、なぜ子どもを育てるのかという問いに悩まされるようになる。