著者
原田 泰
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.13-17, 2000-07-31 (Released:2009-09-03)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

夫が外で働き、妻は家を守るのが日本の典型的な家族であるというイメージがあるが、専業主婦の誕生は新しい。伝統的な農家の嫁は働き手であって、専業主婦ではないからだ。専業主婦が誕生するためには、その夫がまず誕生しなければならない。そのような夫は、1920年代に生まれた。1920年代の経済発展が、多数の高賃金のホワイトカラー、男性熟練労働者を生み出した。戦後の高度成長のなかで、この専業主婦の夫はさらに一般化した。ところが今日、日本の高度成長は終わり、賃金は停滞している。男性だけの稼ぎで生活水準の向上を期待できなくなった。女性が働くことが当然に求められるようになっていく。男たちは専業主婦の夫から働く妻の夫に変わり、専業主婦を前提とした社会のあり方も変わっていくしかない。日本の「伝統的」家族も、その淵源は新しい。家族は社会の変化に応じて生まれたものである。それが生まれる過程で、過去の伝統や文化がさまざまな影響を与えたことは事実だろうが、決定的な力は経済環境にある。

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もともと武士層は専業主婦家庭だったのでしょうが人口の約7%でしかなかったわけです。それが庶民に広がり始めたのは1920年代のようですが当時は共働き前提の農業従事者が半分以上だったので、全体的な傾向になったのはご指摘のとおり戦後ですね。 https://t.co/BwCrCsUoX3 https://t.co/IgZsfajDW7

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