- 著者
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新山王 政和
- 出版者
- 日本音楽教育学会
- 雑誌
- 音楽教育学 (ISSN:02896907)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.1, pp.1-9, 2008 (Released:2017-08-08)
- 参考文献数
- 14
これまで音高に問題のある歌唱を扱った研究では, 100セント以上ピッチが外れた事例を取り上げる場合が多かった。これとは異なり筆者の一連の研究では50セント程度以内の微小なピッチ差で低く歌い続けてしまう現象 (以下, フラットシンギングと記述) に着目し, 他の先行研究でも報告されている「提示に用いる音 (以下, 提示音と記述) の種類によって声の再生ピッチが異なる現象」に関して, ピッチ知覚の面から洗い直すことを試みた。その結果, 声による提示とピアノによる提示では, 指導現場における現実的対応にも直結する次の4つの傾向が潜んでいる可能性を確認した。1. ピッチを知覚する段階 (ピッチ知覚レベル) と発声で再現する段階 (ピッチ再生レベル) では, 提示音に対して異なる反応が顕れる。2. ピッチを知覚する段階では, 提示音に対する慣れや聴き取り方の習熟度が影響する。3. ピッチを知覚する段階では, ボーカル音よりもピアノ音の方がピッチを判別し易い傾向がある。4. ピッチを知覚する段階では, 高い方向へのピッチ差は判別し易く, 低い方向へのピッチ差は判別しにくい傾向がある。これがフラットシンギングの発生する一因である可能性も考えられる。