- 著者
-
倉恒 弘彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本心身医学会
- 雑誌
- 心身医学 (ISSN:03850307)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.11, pp.1002-1009, 2014-11-01 (Released:2017-08-01)
慢性疲労症候群(CFS)という疾病の病因・病態がしだいに明らかになってきた.CFSでは,明らかな原因がみつからないにもかかわらず,長期にわたって激しい疲労とともに微熱,頭痛,筋肉痛,関節痛,脱力感,思考力低下,抑うつ,睡眠障害などがみられ,多くの患者が日常生活や社会生活に支障をきたしている.長期にわたり外出することも困難で,ほとんど自宅内で生活をせざるを得ない患者も多く,CDC(米国疾病予防管理センター)はCFSを克服すべき重要な疾患の一つととらえてその対策に取り組んでいる.われわれは,CFSは感染症を含む種々の生活環境ストレスや遺伝的な要因がきっかけとなった神経・内分泌・免疫系の変調であり,内在性のウイルスの再活性化に伴い産生されたサイトカイン(TGF-βやインターフェロンなど)による脳・神経系の機能障害であるという仮説を1998年に発表し,病因・病態の解明に向けた取り組みを進めてきた.ごく最近,CFS患者に対して脳内ミクログリアの活性化を直接調べることのできるポジロトンCT検査を行ったところ,CFSでは視床,中脳,橋などの脳幹部や海馬,帯状回,扁桃体などにおいて神経炎症が存在し,神経炎症の程度と痛み,抑うつ,認知機能障害の程度が相関していることを世界で初めて明らかにした.そこで,本稿では最近明らかになってきた慢性疲労症候群における病因・病態を紹介するとともに,CFSに陥るメカニズムについて解説する.