著者
横山 顕子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.251-257, 2019 (Released:2019-04-01)
参考文献数
16

過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) に対して腸管に焦点を当てた催眠療法 (gut-directed hypnotherapy : GDH) の有効性が欧米などから多く報告されているが, 本報告では, GDHではなく, 単回の年齢退行催眠療法で1年にわたり有効であった男性の下痢型患者の1例を報告する. 症例は49歳, 男性. Rome Ⅳ基準下痢型IBS. 8歳の頃に実母が病死後, IBSを発症. 母親が亡くなる前後の場面を催眠下で想起し, その場面に対する認知の変容を導いたところ, セッション後IBS症状は軽快した. セッション前後の心理検査ではうつと不安の尺度が軽減し生活の質が高まったと評価された. 少ない来院回数を望む患者やGDHに反応しない患者, 幼少時のトラウマの関与が疑われる患者に対しては, 退行療法が治療の選択肢の一つになると考える. なお, 退行療法を行う際には, クライアント自らの気づきを尊重することが重要と考える.

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