著者
土井 政和
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.67-81, 2014-10-18 (Released:2017-03-31)

本稿は,まず,更生保護法施行前後における保護観察実務の変化の存否とその背景について述べたのち,刑事司法と福祉との連携が進行していく中で,保護観察の将来の方向性はいかにあるべきかについて言及する.次に,刑事司法と福祉との連携を促進し,対象者の社会復帰支援を強化する福祉の側からの試みが現在どのような課題に直面し,また,刑事司法制度にどのような課題を提起しているかについて検討する.本稿では,検察庁への社会福祉士の配置及び保護観察所による更生緊急保護事前調整モデルの二つを取り上げる.特に更生緊急保護事前調整モデルは二つ可能性をもつ.一つは,対象者が保護観察所に赴いてから手続をとる現在の更生緊急保護制度における時間的制約を解消し,早期に福祉に繋ぐことを可能にすること,もう一つは,対象者の選択に関し,被疑者段階にある対象者に対して綿密な情状調査が一種の「起訴猶予前調査」として行われ,更生緊急保護実施後の経過が良好でない場合は再起するという運用をもたらす可能性があることである.近年,再犯防止を目的として諸施策の試行が拡大しているが,再犯防止概念は本人支援と社会防衛の両者を内包しており,その用い方によっては,視点が本人支援から社会防衛へと容易に転換しうるものであることから,福祉の刑事司法化をもたらさないためにも,福祉は刑事司法との関係において対等性・独立性を失わないようにしなければならない.

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