- 著者
-
岡田 桂
- 出版者
- 日本スポーツ社会学会
- 雑誌
- スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.2, pp.29-48, 2019-09-30 (Released:2020-10-15)
- 参考文献数
- 20
本論では、男性中心的(男性ジェンダー化された)文化として発達してきたスポーツにおいて、マスキュリニティ/男性性がどのような状況にあるかを、特にこの10数年の変化を踏まえて考察する。スポーツにおけるマスキュリニティの研究は、これまで主に男女のジェンダー格差と(男性)同性愛嫌悪を中心として行われてきた。しかし2000年代頃を境に、英米を中心とした社会で性的マイノリティの権利獲得――いわゆるLGBT主流化――が進むにつれ、男性性の最後の牙城ともいえる軍隊やスポーツの世界でも徐々に同性愛者の受容が進みつつある。一方で、2000年代以降、“女性的” 競技であるとのイメージが持たれやすいフィギュアスケート競技において東アジア系男性選手の活躍が目立っていることを事例として、グローバルに進みつつあるマスキュリニティ概念(範囲)の変化の中で、ジェンダー・イメージというものが人種や競技の序列化の中で再配置されつつある可能性を指摘する。また、マスキュリニティにとってセクシュアリティの問題(同性愛)がタブーでなくなりつつある中、逆にジェンダーの軛が相対的に強まりつつあることの問題点を、英語圏における文化的な「ジェンダー志向」を考察することによってあきらかにする。