著者
高橋 豪仁
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.53-66, 1994-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
36
被引用文献数
2

本研究の目的は、スタジアムにおけるプロ野球の集合的応援には、どのような型が繰り返し行われているかということを儀礼の観点から明らかにすることである。広島東洋カープの応援を事例として、広島市民球場で行われたナイトゲーム9試合を観察し、応援行為に共通して見られる型を見い出し、そこで用いられている応援のリズム・パターンを北沢の理論を援用して象徴=構造論的に検討した。この研究によって次のことが明らかになった。(1) スターティングメンバー発表時の応援、1回表前の選手のコール、攻撃前の三三七拍子や7回攻撃前の風船飛ばし等、ゲームの時間や空間の境界をしるしづけるものとして、応援がなされていた。また得点、出塁、アウトを取る等のゲームの状況に合わせて、一定のパターンで、太鼓や鐘が打たれ、トランペットや笛が吹かれ、メガホンが打ち鳴らされた。応援行為の定式化と反復性が可能となるのは、スポーツの進行そのものが特定のルールによって秩序づけられていることによる。(2) 集合的応援行為において応援団は重要な役割を果たしていた。ライト側応援団、センター側応援団、レフト側応援団は、各選手のヒッティングマーチを互いにタイミングを合わせて演奏した。応援団はフィールドからのゲームの進行状況に関する情報を用いて、観戦者たちの集合力を喚起していた。(3) 応援で用いられるリズムの基本型は、農耕儀礼で用いられる「ビンザサラ」のリズムと同じであった。また、リズムの型は3拍と7拍が核となり、女性のジェンダーを表象し、現世から神々への報告である「打ち鳴らし」の形態をとっていた。このことは、プロ野球の応援において、豊饒を願う農耕儀礼と同じように、自分のチームの勝利をかなえようとして行う、日本の神話的思考に基づく呪術的な行為が表出されているということを示唆しているのかもしれない。

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