著者
倉持 将也 植田 宏昭
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.21-37, 2023 (Released:2023-02-07)
参考文献数
56
被引用文献数
1

熱帯インド洋-西部太平洋域の対流活動に関連して、2020/21年冬季の前半と後半の間で東アジアの気温偏差は負から正へと転じた。平年より気温が低かった2020/21年冬季の前半では、対流圏上層のチベット高原南東部と日本上空にそれぞれ高気圧性と低気圧性の循環偏差対が発現していた。この波列パターンは、東インド洋から南シナ海上で強化された熱帯積雲対流に励起されたロスビー波の伝播を示し、本研究で新たに東南アジア-日本(Southeast Asia–Japan: SAJ)パターンと呼称する。一方、2020/21年冬季の後半では、活発な対流活動域は東方のフィリピン海へ移動し、上層高気圧偏差もまた日本の南へと位置を変えた。このような循環偏差は西太平洋(western Pacific: WP)的なパターンとして認識でき、東アジアの高温偏差をもたらした。SAJパターンに関連するチベット高原南東部の高気圧性循環偏差と南シナ海の対流強化の関係は、パターンが顕著に発現した月を抽出した合成解析でも統計的に有意であることが確認された。一方、WP的なパターンの半分の場合では、フィリピン海での対流の活発化を伴っていた。これらの異なる2つの循環偏差は、線形傾圧モデルに南シナ海とフィリピン海に熱源を与えることでそれぞれ再現された。さらに渦度収支解析から、チベット高原南東への気候学的な上層風の収束が SAJパターンの空間的な位相固定性において重要であることが示唆された。

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