著者
清木 達也
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.379-402, 2021 (Released:2021-04-12)
参考文献数
61
被引用文献数
7

本研究では全球降水観測計画主衛星(GPM)に搭載された二周波降水レーダー(DPR)を利用して雹の三次元分布を全球規模で検出する手法を提案した。雹の検出にはKu帯におけるレーダー反射因子(ZKu)に加え、Ku帯とKa帯のレーダー反射因子の比率(DFR)、そして再解析データから得られる気温分布を利用した。検証には地上レーダーの粒子種判別プロダクトを利用した。本研究では、雹粒子が雨との衝突によって急速に成長する事に着目し、二粒子衝突モデルによって雹の成長を特徴づけられると仮定した。ここで、本研究で取り扱う雹はKu帯とKa帯の散乱特性に基づいて定義されており、一般的に定義される雹の他に高密度の霰や小さい凍結雨滴を含んでいる事が考えられる。 まず初めに、降雹の一事例を基にZKuとDFRの散布図の特徴を抽出したところ、二粒子衝突モデルに則った成長曲線は雹の分布をよく捉えられることが分かった。気温に依存して雹の密度が変化する事から、本研究では五つの温度帯で雹を検出するためのZKuとDFRの閾値を定義した。この閾値を用いて地上レーダーとGPM-DPRがマッチングする74の雹事例を抽出し、雹の検出精度を検証した。この検証を通じて、本研究では雹の誤検出を低減する融解雪除去フィルター及び雨除去フィルターを提案した。これら雹閾値と誤検出除去フィルターを準全球観測データに適用したところ、雹は陸上と海上の収束帯に広く存在することが分かった。特に海洋上の雹は凍結高度付近に薄く(厚さ1500m以下)広く存在しており、その存在は従来の地上レーダー網では見逃されていたことが示唆された。最後に、凍結高度付近の薄い雹層を除去するフィルターを追加したところ、特に陸上の雹を伴う深い対流を選択的に捉えられた。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (2 users, 2 posts, 1 favorites)

New J-STAGE Online Release of JMSJ! https://t.co/veihmgyFhe Seiki, T., 2021: Near-global three-dimensional hail signals detected by using GPM-DPR observations. J. Meteor. Soc. Japan, 99, 379-402. https://t.co/YyzUlDQs1p

収集済み URL リスト