- 著者
-
関山 剛
梶野 瑞王
- 出版者
- Meteorological Society of Japan
- 雑誌
- 気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.99, no.4, pp.1089-1098, 2021 (Released:2021-08-27)
- 参考文献数
- 36
- 被引用文献数
-
3
本研究では2種類の水平解像度(3kmおよび250m)を使って、2011年福島原子力事故下の汚染源近傍(距離3.2kmおよび17.5km)沿岸の2観測地点での移流拡散場再現におけるオイラーモデルの性能を検証した。250m格子シミュレーションはこの検証のために新たに実施され、複雑地形上における詳細な風速場と濃度場の再現に成功した。3km格子モデルは福島第一原子力発電所付近の風とプルームの詳細な再現には失敗したが、見逃し率が低いために時折250m格子モデルよりも高い性能を示すことがあった。これは3km格子モデルの数値拡散が大きいことが原因である。オイラー移流拡散モデルの欠点は発生源近くでの人工的な数値拡散だと考えられている。この人工的な数値拡散は空振り率を増加させる代わりに見逃し率を減少させる。この特徴は環境緊急対応(EER)システムにはむしろ好都合となる。その上で、250m格子モデルの結果はプルーム拡大処理(マックスプーリング)によって確実に改善させることができた。この処理はプルームの幅を拡大させることにより、短時間のラグやプルームの小さな位置ずれを目立たなくした。プルーム拡大処理は統計スコアを改善させることで高解像度モデルに有益であり、EERシステムに役立つものである。