- 著者
-
吉池 信男
- 出版者
- 国立保健医療科学院
- 雑誌
- 保健医療科学 (ISSN:13476459)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.6, pp.556-573, 2017-12-01 (Released:2018-02-20)
- 参考文献数
- 21
乳幼児期の栄養・食生活は,その時期における健全な成長・発達に対してのみならず,成人後のNCDsリスクの低減という観点からも重要なことと考えられる.乳幼児期の栄養・食生活の実態に関しては,10年毎に実施されている乳幼児栄養調査から重要な情報を得ることができる.最新の2015年の調査においては,以前と比べて,母乳育児を支援する環境づくりに進捗が見られ,母乳栄養児の割合も高くなった( 1 か月51.3%, 3 か月54.7%).また,離乳食の開始時期も以前より遅くなってきており,2007年に出された「授乳・離乳の支援ガイド」とそれを活用した普及啓発活動の効果の表れと考えられた.一方,離乳食について約75%の保護者が何らかの「困りごと」を有しており,離乳食に関する学習の場として最も重要な保健所・市町村保健センター等における支援のさらなる充実が望まれる.幼児期の食習慣の形成には,保護者の影響が大きいと考えられ,保護者が抱える子どもの食事に関する「困りごと」への支援とともに,第 3 次食育推進基本計画が示している「若い世代を中心とした食育」や「子どもの成長,発達に合わせた切れ目のない」対応の推進が必要である.幼児期の食事に関わる健康問題として重要な食物アレルギーへの対応や肥満予防のための取組についても課題があり,今後の改善が必要と考えられる.子どもの貧困が社会問題化する中で,家庭の経済状況に応じた支援のあり方も検討される必要がある.