著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 篁 宗一 蔭山 正子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.76-87, 2019-02-15 (Released:2019-02-26)
参考文献数
34

目的 精神障害者の子を持つ親が,親亡き後の当事者の地域での生活を見据えて具体的にどのような準備をしているのかを明らかにすることを目的とした。方法 関東近郊に在住の精神障害者の子を持つ親22人に対して2016年12月から2017年2月までインタビュー調査を行った。インタビューデータは質的帰納的に分析し,逐語録から親が行っている準備に関する記述をコードとして抽出した。コードの意味内容の類似性と相違性を検討し,類似するコードを複数集めて抽象度を上げたサブカテゴリとカテゴリを抽出した。なお各々のカテゴリをさらに類型化し,なぜその準備が行われたのかという目的を考察した。結果 研究参加者のうち父親が9人(40.9%),母親が13人(59.1%)であった。彼らの年代は60歳代が9人(40.9%),70歳代が10人(45.5%),80歳代が3人(13.6%)であった。 親亡き後の当事者の生活を見据えた具体的な準備として10カテゴリが抽出された。すなわち 1)自分の死を予感し,支援の限界を認識する,2)親の死について当事者との共有を試みる,3)自分の死後を想定し,当事者に必要な情報や身辺の整理を進める,4)親族に親亡き後の当事者の生活や相続について相談するとともに,社会制度の利用を検討する,5)当事者の住まいと生活費確保の見通しをつけようとする,6)親が社会資源とつながり,当事者の回復や親自身の健康維持に努める,7)当事者の病状安定や回復に向けて服薬管理や受診の後押しをする,8)当事者が自分の力で生活することを意識し,生活力を把握する,9)当事者の生活力や社会性を育み,親以外に頼れる人をつくる,10)当事者が楽しみを持つことすすめ,就労を視野に入れて支える,であった。親は,親亡き後に残された当事者が生活する上で困らないようにすることと,当事者が地域で安定して暮らすことを目的として準備を進めていた。結論 親が自分の死後を視野に入れて当事者の地域での生活に向けた具体的な準備を進めるためには,当事者の自立生活の必要性を意識することの重要性が示唆された。

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