著者
石黒 彩 磨田 百合子 井上 まり子 矢野 栄二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.582-592, 2020-09-15 (Released:2020-10-10)
参考文献数
28

目的 人々が健康に安心して暮らせる地域づくりには,医療・保健・福祉等の直接的サービスだけでなく,住民の自助・共助を推進する社会関係資本の強化が重要である。その方法として,地域にある社会資源の調整やネットワーク形成を通し地域を自立活性化させるコーディネーターの機能が注目されているが,コーディネートの具体的な方法は明確化されていない。本研究では,東日本大震災の被害を受け住民の抱える生活課題が複雑化した被災地にて,地域づくりに従事する地域福祉コーディネーター(Community Social Coordinator, CSC)を対象に質的研究を行い,地域への介入プロセスを明らかにする。方法 対象者は,宮城県A市で震災後の地域づくりのために配置されたCSC,10人とした。40~90分の半構造化面接を個別に行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した。結果 CSCによる地域への介入プロセスには,《地域の中で関係を構築する》,《地域をアセスメントする》,《地域へ働きかける》の3段階があった。地域のアセスメントでは,〈地域の課題や強みを見定める〉というように地域課題だけでなく地域の資源となりうる強みを見極めていたが,この際〈対象分野を限定しない〉ようにしていた。地域への働きかけでは,〈CSC自らが地域に働きかける〉だけでなく〈住民の主体性を支援する〉ことや〈住民と資源をつなぐ〉こともCSCは行い,〈地域の課題解決をはかる〉ことへ進んでいた。また〈地域と協力する〉ことや〈他の支援者と協力する〉ことにより,地域への働きかけが促進されていた。結論 本研究の結果から,CSCによる地域への介入プロセスには,地域の中での関係構築・地域のアセスメント・地域への働きかけの3段階があることが示された。対象分野を限定せずアセスメントした地域の課題や強みをもとに,地域や他の支援者とも協力しながら地域へ働きかけており,その際住民を主体として考えコーディネートが進められていることが明らかになった。

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