著者
近藤 一博
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.218-221, 2013 (Released:2017-02-16)

現代はストレス時代と言われ,ストレスの蓄積状態である「疲労」による,うつ病や自殺が増加している。このような状況を打開するためには,疲労を客観的に測定して予防することが必要となる。 我々はこの目的のために,人の意志では変化しない疲労のバイオマーカーを検索し,唾液中に放出されるヒトヘルペスウイルス(HHV-)6による疲労測定法を開発した。HHV-6は突発性発疹の原因ウイルスで,100%の人の体内でマクロファージとアストロサイトに潜伏感染している。マクロファ ージで潜伏感染しているHHV-6は,1週間程度の疲労の蓄積に反応して再活性化し,唾液中に放出される。このため,唾液中のHHV-6の量を測定することによって中長期の疲労の蓄積を知ることができた。 さらに我々は,HHV-6の再活性化の分子機構を研究することにより,疲労因子(FF)と疲労回復因子(FR)の同定に成功した。FF と FRは末梢血検体で測定可能で,被験者の疲労の定量だけでなく,回復力の評価も可能であることが明らかになってきた。 HHV-6は,ほぼ 100%のヒトで脳の前頭葉や側頭葉のアストロサイトに潜伏感染を生じている。この潜伏感染HHV-6も,ストレス・疲労によって再活性化が誘導されると考えられる。 我々は,脳での再活性化時に特異的に産生される,HHV-6潜伏感染遺伝子タンパクSITH-1 を見出した。SITH-1発現は,血液中の抗体産生に反映され,血中抗SITH-1抗体を測定することによって,脳へのストレスと疾患との関係を検討することが可能であった。抗 SITH-1抗体陽性者は,主としてうつ病患者に特異的にみられ,抗 SITH-1抗体がうつ病のバイオマーカーとなることが示唆された。 さらに,SITH-1タンパクを,ウイルスベクターを用いてマウスのアストロサイト特異的に発現させたところ,マウスはうつ症状を呈することがわかった。これらのことより,脳へのストレス・疲労負荷は,潜伏感染HHV-6の再活性化を誘導することによって,潜伏感染タンパクSITH-1を発現させ,うつ病の発症の危険性を増加させるというメカニズムが示唆された。

言及状況

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J-STAGE Articles - 疲労誘発因子と抗疲労因子:うつ病の疲労による誘発機構 https://t.co/GhtuisHNSf
まだ要約しか読んでないけど、面白いの見つけた~! ストレスでヒトヘルペスが再活性化して、うつ病が誘発される……
ちなみに先行研究はこちら。 概要としては下記。 ①疲労が蓄積すると、潜在的に持っていたヒトヘルペスウイルスが唾液中に増える・疲労・回復因子発見 ②ヘルペスウイルスの潜伏感染遺伝子がSITH-1であることを発見 疲労誘発因子と抗疲労因子:うつ病の疲労による誘発機構 https://t.co/npz02pyFCK
東京慈恵会医科大学の近藤教授は、何年も前にこの結論にたどり着いていた。マウスの実験も終わっていたのに、なぜ発表はこの時期になったのだろう・・・? 疲労誘発因子と抗疲労因子:うつ病の疲労による誘発機構 https://t.co/r1vOnFMPC4 https://t.co/HKE5pHUJtM
HHV6やHHV7は疲労やストレスで活性化される。疲労のバイオマーカーとして利用する研究がある。抗SITH-1抗体はうつ病のバイオマーカー候補らしい。 https://t.co/fPDKDhNwEl

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