- 著者
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西山 孝樹
藤田 龍之
知野 泰明
- 出版者
- 公益社団法人 土木学会
- 雑誌
- 土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.1, pp.123-131, 2012 (Released:2012-11-20)
- 参考文献数
- 64
わが国では,10世紀をピークとして9世紀から11世紀にかけて,「土木事業の空白期」が存在していたことを本研究で指摘した.その背景には,10世紀における律令国家の崩壊が最も影響したと考えられる.そして更なる要因として,平安貴族を中心に,土の掘削を忌み嫌う「犯土」思想が,10世紀後期から11世紀に存在しており,その思想が「土木事業の空白期」に影響を及ぼしていたとみられることを示した. しかし,空白期における土木事業は,全く実施されなかったわけではなかった.わずかではあるが,僧によって行われており,文献史料を中心に彼らの事績をまとめた.そして,「犯土」思想が僧による土木事業に影響を与えたかについても迫り,平安時代における「土木事業の空白期」の実態を明らかにした.