著者
結城 伸泰
出版者
日本臨床免疫学会
巻号頁・発行日
pp.61, 2009 (Released:2009-10-21)

ギラン・バレー症候群(GBS)は、風邪をひいたり、下痢をしたりした1、2週後に、四肢の筋力低下が始まり、1、2週にわたって進行し、腱反射が消失する。ポリオ根絶を目前とした現在、急性発症の弛緩性運動麻痺を呈する疾患のなかでもっとも頻度が高く、人口10万人あたり年間2人の発症が推定されている。興味深いことに、その診断基準は、1976年米国で行われた豚インフルエンザ予防接種後に多発した患者の疫学調査のため緊急で作製された経緯がある。演者は、平成元年に下痢を前駆症状としたGBS患者を受け持ち、その先行感染因子が下痢症や食中毒の主要な起因菌のCampylobacter jejuniであることを突き止めた。C. jejuni腸炎後に、GM1ガングリオシドに対するIgGクラスの自己抗体が上昇し、ミエリンではなく、軸索が傷害される、GBSのサブグループが存在することを報告した。下痢を前駆症状としたGBSから分離されたC. jejuniの菌体外膜を構成するリポオリゴ糖(LOS)がGM1類似構造を有することを明らかにした。GM1、C. jejuniLOSをウサギに感作し、臨床的にも、免疫学的にも、病理学的にも、ヒトの病気と一致する疾患モデルを樹立することに成功し、新しい治療法の開発に役立てることができるようになった。これまで自己免疫病発症における分子相同性の研究は、ペプチドに対する自己反応性T細胞に主として目が向けられていたため、分子相同性仮説の立証には至らなかった。しかしながら、疫学的な関係が確立しているC. jejuniとGBSで、糖脂質の糖鎖に対する自己抗体という別の着眼点から切り込むことにより、完全に証明することができた。糖鎖相同性により自己免疫病が発症し得るという新しい概念が、他の原因不明の自己免疫病の解明にも役立つことを期待している。時間が許せば、インフルエンザワクチンの副作用を減らすために調べておくべきことを提言したい。

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カンピロバクター感染とギラン・バレー症候群:分子相同性仮説の立証 糖鎖相同性により自己免疫病が発症し得るという新しい概念が、他の原因不明の自己免疫病の解明にも役立つことを期待している。 https://t.co/RhbslAGEYk

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