著者
菊地 克子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.36-41, 2009 (Released:2009-04-06)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1 1

医療従事者においては,手洗いやアルコールの擦り込みによる手指消毒などにより,しばしば手指皮膚の乾燥や手湿疹が起こる.手湿疹の多くは刺激性皮膚炎である.病変を持つ皮膚には健常皮膚と比べて有意に常在細菌数が多いため,効果的な殺菌作用を示すのみならず皮膚傷害性が少ない消毒剤を使用することが院内感染防御の上でも重要である.生体膜構成脂質と類似の構造を持つ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を構成単位としたポリマー(MPCポリマー)は保湿性があり皮膚刺激を減弱することが知られている.健常ボランティア36人を対象に,MPCポリマーを配合したアルコール手指消毒剤の手指皮膚に対する影響を計測機器による角層機能評価により調べた.MPCポリマー配合製剤とMPCポリマーを配合しない対照品をそれぞれ2週間ずつ使用するクロスオーバー試験を行ったところ,手背皮膚の角層水分量は,対照品で低下が認められたのに対し,MPCポリマー配合製剤では増加傾向がみられ,同時に経表皮水分喪失量が低下し,バリア機能向上が示唆された.さらに,MPCポリマー配合製剤では,使用時の刺激感・痛みが対照品に比べ少なかった.これらの結果から,MPCポリマー配合アルコール手指消毒剤はより皮膚刺激性・傷害性が少なく医療従事者にとってより好ましい製剤であることが示された.

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