著者
由井 秀樹
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.40-50, 2020-07-31 (Released:2021-08-06)
参考文献数
48

都市部において、低所得層向けに設立された施設を中心に、1920年代から医療施設出産が普及しはじめていたことが近年の研究で明らかになってきた。本稿では、この議論を精緻化させるため、行政の社会調査を主な素材に、1920–30年代の東京市における①低所得層の利用できた施設の分布状況、②低所得層のなかでも生活のより厳しい人々が施設の利用をためらった要因を検討した。結果、以下が明らかになった。①施設は市の中心部に集中していた。②減額されていたとしても、利用料の負担が重く、利用手続きが手間であったことなどが、低所得層のなかでも生活の厳しい妊婦に施設の利用をためらわせていた。彼女たちは、修練のため低価格で出産介助を行う資格取得後間もない産婆を利用することがあったが、低所得の施設利用者は、専門職養成や医学研究のための学用患者でもありえたことを考慮すれば、学用患者の階層化が生じていたといえる。

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「1920–30年代の東京市における低所得層の出産と医療施設」保健医療社会学論集,Vol.31,No.1,2020 https://t.co/rQcG74UQE5 「学用患者」というキーワードがある。約百年前の東京で貧困環境にある女性の出産事情が推察される論文。 産婆→助産婦→助産師と助産/母性/小児看護学等で変わったのが現代。

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