著者
林 成之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.191-197, 1997-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12
被引用文献数
2 18

脳の低温療法は、強力な脳保護作用を有するが心肺機能や免疫防御系への侵襲が強く,実際の臨床応用は難しいとされてきた。本論文では,その病態機構として下垂体機能低下に基づく細胞性免疫不全が原因であることを報告し,同時に低体温患者の脳温管理法と全身の集中管理法を明らかにした。脳低温管理の脳保護作用は,脳内熱貯留の防止,酸素代謝の低下,フリーラジカル産生の抑制,シナプス興奮の抑制などによって二次的脳損傷機構を防止している間に,障害された神経細胞の修復に必要な酸素と代謝基質を供給し神経細胞内ホメオスターシスの改善を図ることにある。その際,覚醒や知能獲得に機能するA10神経系の興奮性神経細胞死が脳の低温管理によって免れることが,この治療を受けた患者に知能障害の少ない理由であると考えられる。脳低温管理後にA10神経系の賦活療法を併用し,植物状態から脱却せしめた臨床例は,これを逆説的に証明している。

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