- 著者
-
小田 裕昭
- 出版者
- 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
- 雑誌
- 日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.3, pp.137-149, 2007-06-10 (Released:2009-01-30)
- 参考文献数
- 41
- 被引用文献数
-
2
5
必須アミノ酸, 非必須アミノ酸という命名法の問題点は古くから指摘されてきたが, 特に非必須アミノ酸の定義には曖昧さもあり, 厳密にすればするほど複雑になってしまう。必須アミノ酸の必須性は, 主にその炭素骨格に依存しているが, 必須アミノ酸を生体内で合成するには長いステップを必要とするため, 進化の過程でその合成系が失われたと推測される。原核生物, 植物, 菌類は, すべてのアミノ酸合成能をもっているため必須アミノ酸をもっていない。一方, ヒトを含むすべての動物から原生生物の細胞性粘菌は必須アミノ酸をもち, その必須アミノ酸はほとんど同じである。原生生物の進化のあるときに10種ほどのアミノ酸合成能が一斉に失われたようである。ゲノム情報からもこのことが裏付けられる。原生生物の進化過程の限られた時期に複数のアミノ酸合成能を欠落させた原因は不明である。