著者
福井 康貴
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.198-215, 2008-06-30 (Released:2010-04-01)
参考文献数
43

本稿は,戦前日本の大卒者の就職において〈自己の力で職に就く〉という自己志向的なルールが登場するまでのプロセスを明らかにする.明治・大正期の就職は紹介者や学校成績の影響力が非常に強かったのだが,従来の研究はこうした事態を現代的な価値観点を投影して理解しがちであり,両者の担う意味を十分に捉えていなかった.本稿では,当時の人々の認識に定位することでこの事態をより正確に把握し,それが自己志向的なルールの登場とともに背景化したことを指摘する.最初に,近世商家の職業観と対照する形で,戦前における職業選択の自由を検討し,それを職業選択の可能性として社会学的に概念化する.つぎに,この可能性に対処するために,就職が紹介者と学校成績への信頼という2つの形式をとったことを指摘したうえで,人々が両者を正当なものとして考えていたことを明らかにする.最後に,大正期後半から昭和初期に両者が非正当化すると同時に,志望者の「人物」に注目する面接試験が登場する経緯を描きだす.その過程は,「自己/他者」および「個人/制度」という行為主体に関する区別に「正当/不当」という道徳的な区別を重ねることで,自己本位の職業選択のあり方を導くものだった.

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@yaizawa すごい昔じゃないですかね。先生がいたころhttps://t.co/0P085l2rr3 そこで福沢は「学問のすすめ屋」としてつちかった人脈を駆使し,若者たちに勤め先を斡旋していた.記事にあるように,当時の慶應義塾は人材を各所に配分する一種の「桂庵」として機能していたといってよいだろう.
昔の小説に登場する人物にニートが多い理由を調べたのですが、想定以上に面白い論文でした。 身分精度が廃止されてから就職がシステム化するまでの間、紹介が就職に与える影響が極めて強く、コネのない者にとっては職業の斡旋を待つことが普通だったということでしょうか。 https://t.co/4jxbGLYH2g
φ(..)メモメモ 福井 康貴(2008)「就職の誕生-戦前日本の高等教育卒業者を事例として-」『社会学評論』Vol. 59 No. 1 P 198-215 : http://t.co/LyE61bW85p
(RT @contractio) [Luhmann][sociology][education] / “福井康貴(2008)「就職の誕生:戦前日本の高等教育卒業者を事例として」(社会学評論59) - J-STAGE” http://t.co/e1RDUDxpGp

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