著者
安達 智史
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.433-448, 2009-12-31 (Released:2012-03-01)
参考文献数
27

グローバル化の進展は,先進諸国において移民やエスニック・マイノリティを増加させている.それにともなう文化的多様性の増大は,ホスト社会に対し,社会的・経済的に寄与するとともに,マジョリティの存在論的不安と社会的緊張を高めている.従来,文化的多様性は,多文化主義によって積極的に議論されてきた.だが,文化的多様性の承認は,社会の結束の膠にかわとならず,逆に人々の不安を増大させるものとして批判されている.現在,社会的結束と文化的多様性の両立という問題が,政策的・哲学的な課題として浮上している.社会的結束と文化的多様性の両立のためには,それらの漸次的な融和が不可欠である.一方で,文化的多様性を抑制しつつ共通の「所属」の感覚を高め,他方で,多様化する環境に人々を馴致させ,差異を「安全/安心」なものとして提示することである.本稿は,イギリスの社会統合政策を,所属と安心/安全についての2つの方策の関係とその変化に焦点を合わせ,分析するものである.具体的には,戦後からサッチャー政権以前(1948-79年),サッチャー以降の保守党政権(1979-97年),そして新労働党政権(1997年- )という3つの時期に区分し論じる.とりわけ,シティズンシップとブリティッシュネスという観念を機軸に据える,新労働党の新たな社会統合政策と哲学に着目する.それにより,ポスト多文化主義における社会統合の1つの形式を提示する.

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