著者
宮原 浩二郎 森 真一
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.2-20, 1998-06-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
32

「地震」と「震災」はそれぞれ別の対象を指している。「地震」は地面の揺れという自然現象を指す。それに対して, 「地震による災害」である「震災」は, 自然と人間生活の相互作用現象を指示している。それゆえ, 「震災」の研究には, 人間生活の様態を知ることが不可欠である。このような視点に立つわれわれは, 本稿で, 芦屋市を事例として, 「阪神・淡路大震災」の特徴の1つである, 被害の区域差の記述を試みる。特に, 人的被害の区域差と被災者住民の生活・居住環境を記述する。われわれは, 芦屋市を5区域に分け, それぞれの震災被害, 生活・居住環境のデータを集計した。データから, 芦屋を構成する5区域は, 市が標榜する「国際文化住宅都市」のイメージに合致する程度がそれぞれ異なることが浮き彫りにされる。中間平坦区域は, 「邸宅地」指標の高い山麓区域と, 「新住宅地」指標の高い埋立区域を圧倒的に上回る被害を出した。つまり, 「住宅都市」イメージから最も距離のある中間平坦区域は生活居住環境の対地震抵抗力が弱く, 最大の被害を出したのではないかと考えられる。

言及状況

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https://t.co/ftqhESRSkg >「地震」をいくら研究しても,「震災」の規模や様態を説明することはできない。「震災」は,自然と人間生活の相互作用として発生する。したがって,「震災」の研究には,被害を受ける客体である人間生活の様態を知ることが不可欠である。
https://t.co/ftqhESRSkg たとえば、地震の被害は貧困層に偏っているのでそこに重点的な対策を打つべき、というのは成立しうる主張だけど、それは別に貧困が地震の原因だということではないし、貧困をなくせば地震は起こらなくなるという主張でもない。

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