著者
臼井 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F07, 2010 (Released:2010-06-15)

1930年代のイタリアでは、短期間に同じようなエクステリアとインテリアを有する新形式車両として気動車と電車が全国に大量導入された。流線型の先頭形状、丸みを帯びた車体断面、屋根から床下近くまで平滑に仕上げられた車体、茶色の濃淡で統一された塗装、一室空間による開放的な車内、連続する窓とヴォールトの高い天井、それらは同年代に登場した新形式車両にそれぞれ共通する特徴である。これらのデザイン的特質は、表層的なスタイリングの操作ではなく合理的な構造がダイレクトに形態に反映されたものである。そのため余分な装飾や機能は微塵も認められない。しかも製作メーカーの違い、内燃機関か電動機かという動力形式の違いを越えて、ほぼ一様に単純化されたスタイルが反復されている。一定のコードで統一されたシンプルなデザインは、1930年代の新形式車両デザインの特質といえる。そして形態を極端なまでに単純化させることで全体の調和の図られていたモダンデザインの駅舎と、機能に即して無駄な要素をそぎ落としデザインを先鋭化させていった新形式車両。ミニマルなデザインを実現したという点で、1930年代のイタリアに生み出された両者は相通じている。

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この論文に色々書いてある 1930年代イタリア国鉄の新形式車両デザイン https://t.co/hLSBxpKxpk
臼井敬太郎 1930年代イタリア国鉄の新形式車両デザイン イタリア近代の鉄道デザイン研究2 https://t.co/YdUxxrAkxd 1930年代のイタリア国鉄では流線型の車両が多数登場した。ガソリンカーALb48形と電車ETR200形はその先駆けとなった。(続)

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