- 著者
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田中 みなみ
宮崎 清
- 出版者
- 一般社団法人 日本デザイン学会
- 雑誌
- デザイン学研究 (ISSN:09108173)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.2, pp.33-40, 1993-07-25 (Released:2017-07-25)
平安時代から江戸時代にかけて描かれた絵画史料,絵巻物と屏風絵に登場する飲食器を対象として,その性状と用いられ方に着目しながら,歴史的変遷過程を観察・考察した。具体的には,絵画史料に登場する総計466件の飲食器について,(1)性状および使用状況による分類を行って量的データとして処理すること,ならびに,(2)個々の使用状況を観察し古文書の記述と合わせてその特性を考察することを行った。その結果多くの知見が得られたが,以下の3点は特筆すべき事項である。(1)高い高台を有する木椀の発生は器を手に保持して食する作法の確立に呼応しており,その時期は,およそ室町時代中期以降であると考えられる。(2)社会的階層の高低を問わず平安時代から江戸時代まで一貫してケとハレの生活の全面で広く利用されていた木椀は,いわば「飲食器を代表する生活のたの器」であったといえる。(3)「一器多用の器」として木椀が社会的身分を問わず長い時代にわたって使用されてきたのは,木椀が多様な用途に対して優れた対応力を有することを,その使用を通じ,人びとが広く認知してきたためと考えられる。