著者
吉田 耕平
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.125-147, 2013-06-30 (Released:2019-10-10)
参考文献数
45

本稿は,集団生活から逸脱する子どもへの向精神薬投与に着目し,児童 養護施設という場において施設職員が医療的ケアをどのように受け止め, 実践しているのかを明らかにした.研究方法としては,児童養護施設に入 り,施設職員の語りから得たフィールドノーツと参与観察をもとに分析し た.調査の結果,児童養護施設において集団生活から逸脱してしまう子ど もは医療機関を受診し,医師の判断のもと向精神薬投与に至っていた.施 設職員は子どもへの向精神薬投与について否定的であり,子どもへの向精 神薬投与に疑問を抱きながらも,施設の運営・管理のためには「仕方がな い」と納得させている様子がうかがえた.中には,体罰の禁止が制度化さ れたことで医療的ケアへと変化したと捉え,向精神薬の使用が子どもと大 人との関係をつなぐためのコミュニケーションツールであると認識するこ とで, 自らを納得させている職員もいた. 向精神薬に代わる方法として,職員は大人と子どもとの関係が密になれ る環境を整えることや,里親委託を含めた措置変更をあげていた.だが, 子どもが措置先でトラブルを起こすと再び他の施設へ措置するといった形 で措置が行われてしまう可能性もあることから,向精神薬投与は処遇しに くい子どもを落ち着かせ,次々と施設をたらい回しにされる措置変更を阻 止している点もあることを考察した.

言及状況

外部データベース (DOI)

はてなブックマーク (2 users, 2 posts)

Twitter (26 users, 29 posts, 36 favorites)

@F0pBlV3oM6dMNfm @YouTube 南出: 特に今年雑誌『社会学研究』という今年の10月号のこれはコピーですけれども。この中に「児童養護施設の職員の抱える向精神薬の投与への揺らぎとジレンマ」という吉田耕平氏の論文があります。 https://t.co/CNHRJcRVvo
2013年の論文 https://t.co/Ci9FpoHiom
体罰によらない子育ては誠に結構なことで、私も実践してる。だけど体罰によらない子育てを実践するには養育者に精神的余裕が必要なんだよな。ただやみくもに法律で体罰を禁止してたとえば児童養護施設では何が起きてるかというと、子供を向精神薬でコントロールしてるという https://t.co/vLNdUaRxtr

収集済み URL リスト