著者
横山 芳春 七山 太 安藤 寿男 大塚 一広
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.7-17, 2003-09-20 (Released:2017-10-03)
参考文献数
30

伊予灘海域で採取された下灘コアの層相および軟体動物化石群を検討した結果は, 以下の4つにまとめられる.1.下灘コアの層相およびこれに含まれる軟体動物化石の解析結果に基づき, DU-A〜Eの5つの堆積ユニットを識別した.このうち最下位のDU-Aを除く上位4ユニットには, 海成粘土層が発達する.2.下灘コア中に認められる軟体動物化石群は, 松島(1984)の区分した感潮域, 干潟, 内湾停滞域, 内湾泥底および沿岸砂泥底の5つの群集の構成種からなる.さらに土石流堆積物には複数の群集構成種が混合した化石群が認められる.3.堆積ユニットごとに見ると, DU-Bには感潮域化石群, DU-Cには感潮域化石群および干潟化石群が認められ, 縄文海進に伴って感潮域〜干潟が拡大したことを反映しているものと解釈される.DU-Dは内湾停滞域化石群が認められ, 水塊の交換に乏しい内湾の停滞水域下で堆積したものと考えられる.DU-Eには内湾泥底〜沿岸砂泥底化石群が認められ, 下位より潮通しの良い内湾環境下で堆積したものであろう.4.下灘沖において海水が侵入し, エスチュアリー〜干潟環境が成立, 感潮域群集の構成種が出現した年代は約12000〜11000年前以前であろう.約10000年前には急激な相対海水準上昇が生じたため, 感潮域群集および干潟群集が内湾停滞域群集へ急速に群集変化したのであろう.これは地震イベントに伴って, 下灘沖の地溝帯が急激に沈降したことによる可能性が高い.約10000年〜8000年前には, 内湾停滞域群集が発達する閉鎖的な内湾停滞域が形成され, 周囲の河川から流入した細粒物質が大きな堆積速度をもって沈積していた.約8000年前以降は内湾泥底〜沿岸砂泥底群集が生息する潮通しの良い内湾環境へと変化したが, これは地溝帯の埋積と同時に瀬戸内海の成立に伴ったものである可能性が示唆される.

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@ty_geo 瀬戸内海の伊予灘の例ですが、貝化石群集は環境変化の指標となるので非常に面白いです。 アカホヤより下だと泥質層の部分も多そうな印象ですね!https://t.co/Ku4mELu8MO

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