- 著者
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太郎丸 博
- 出版者
- 関西社会学会
- 雑誌
- フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.52-59, 2010-05-29 (Released:2017-09-22)
- 被引用文献数
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1
本稿では、まず日本では数理社会学が不人気である事実を確認し、その理由を説明する仮説として、リベラル仮説と伝統的公共性仮説を検討する。リベラル仮説によると、社会学者の多くはリベラルであるが、マイノリティの生活世界を描くことを通して、抑圧の実態を告発し、受苦への共感を誘う戦略がしばしばとられる。そのため、社会学者の多くは抽象的で単純化された議論を嫌う。そのことが数理社会学の忌避につながる。伝統的公共性仮説によると、日本の社会学では伝統的公共社会学が主流であるが、伝統的公共性の領域では、厳密だが煩雑な論理よりも、多少曖昧でもわかりやすいストーリーが好まれる。それが数理社会学の忌避につながる。このような数理社会学の忌避の原因はプロ社会学の衰退の原因でもあり、プロ社会学の衰退は、リベラルと伝統的公共社会学の基盤をも掘り崩すものである。それゆえ、数理社会学を中心としたプロ社会学の再生こそ日本の社会学の重要な課題なのである。