著者
山本 さつき 鈴木 馨 松浦 友紀子 伊吾田 宏正 日野 貴文 高橋 裕史 東谷 宗光 池田 敬 吉田 剛司 鈴木 正嗣 梶 光一
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.321-329, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
35

銃器捕殺の勢子による追い込み狙撃法(n=4),大型囲いワナ(銃)(n=6),出会いがしらに狙撃するストーキング(n=9),シャープシューティング(n=14),および麻酔薬を用いた不動化捕獲の移動式囲いワナのアルパインキャプチャー(n=14),大型囲いワナ(麻)(n=8),待ち伏せ狙撃するフリーレンジ(n=10)を用いてニホンジカ(Cervus nippon)を捕獲した.肉体的ストレスの指標として測定したクレアチンキナーゼは,追い込み狙撃法(2,057±1,178 IU/L)がシャープシューティング以外の全ての捕獲方法より,また交感神経興奮の影響を反映するアドレナリン,ノルアドレナリンは,追い込み狙撃法(アドレナリン:16.500±4.655 ng/ml,ノルアドレナリン:20.375±8.097 ng/ml)が他の全ての捕獲方法より有意に高かった(P<0.05).精神的ストレスの指標として測定したコルチゾルは,囲いワナ(アルパインキャプチャー:2.63±1.90 mg/dl),大型囲いワナ(銃:1.38±0.50 mg/dl)および大型囲いワナ(麻:3.10±1.79 mg/dl)が他の捕獲方法より高い傾向が見られたが,これらは全てGaspar-Lópezほか(2010)により報告されたアカシカ(Cervus elaphus)の正常変動範囲内(1.30~6.49 mg/dl)であった.以上の結果から,追い込み狙撃法は身体的負荷が大きいこと,囲いワナは他の方法に比較して著しいストレス反応を伴う捕獲方法ではないことが明らかになった.よって,大量捕獲が可能な囲いワナで生息密度を低下させることは,アニマルウェルフェアに配慮した適切な個体数管理の手法になりうると考えられた.

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