著者
伊藤 耕介 沢田 雅洋 山口 宗彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.15-34, 2018 (Released:2018-06-11)
参考文献数
41

台風予測に関する高解像度領域非静力学モデルの性能評価を行うために,5 kmメッシュの気象庁非静力学大気モデル(NHM5km_atm)及びそれに海洋モデルを結合した大気海洋結合モデル(NHM5km_cpl)を用いて,北西太平洋全域を計算領域とした台風予測実験を行った。計算対象は2012-2014年の1200UTCに台風が存在したほぼ全ての事例であり,予測時間は3日間である。本研究では気象庁全球モデル(GSM)の出力を0.5度格子に粗視化したものを初期値・側面境界値として用い,NHM5km_atmとNHM5km_cplによって得られた台風の進路と強度の予測精度をRegional Specialized Meteorological Center (RSMC) Tokyoベストトラックに対して検証し,またGSMの予測精度とも比較を行った。実験の結果,24-60時間の進路予測に関してはNHM5km_atmとNHM5km_cplはGSMよりも良く,特に水平風の鉛直シアが強い場合に改善率は最大20%に達した。ただし,統計的にはこれらの平均値の差は,両側検定で信頼水準90%を超える改善とは認められなかった。強度予測に関しては,初期時刻において強い台風が現実的に再現されていないことがあり,短時間予測の誤差は大きいものの,2日以上の予測に関しては,NHM5km_atmとNHM5km_cplはGSMに比べて20%以上の改善が認められ,統計的にも非常に有意であることが明らかとなった。またNHM5km_cplはNHM5km_atmに比べて,台風強度は平均的に見て弱く再現される傾向にあったものの,変化傾向の相関係数に関しては改善傾向を示していた。このほか,台風の中心決定方法が短時間の進路予測に対して数%程度の影響を及ぼすこと,最大風速予測の成績は参照するベストトラックデータの種類にも依存することが明らかとなった。

言及状況

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@ShoMinobe すみません。進路です(強度も良くなる)。下記のFig. 4-5にまとめています。基本的には、少し先の予報なら進路に効く現象が見えるまで、もう少し先の予報なら、進路に効く現象に効く現象が見えるまでとなります。(続く) https://t.co/nJ3tflNkEB
信じられないかもしれないけど、以前多数事例で検証したときに、日別海面水温とARGOフロートの差より、(日別海面水温を初期値とする)鉛直1次元モデルによる同時刻の予報値とARGOフロートの差の方が小さかった。台風近傍は言うに及ばず、十分外側でも。伊藤ら(2018)の図3 https://t.co/G0gKF8dd5N
北西太平洋全域で5kmNHM計算を行った研究(気象研究所研究報告)がJ-STAGEで公開に。初期渦弱いので、精度としてはまだまだですが、鉛直シアが強いときの進路予測や初期強度誤差が小さいときの強度予測はNHMがGSMより良かったです。台風外側でのSST予報精度改善なども。 https://t.co/LsxtzeyfQe

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