著者
山本 量一
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.173-178, 2019-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
8

概要 実験技術の進歩に伴い,アクティブマター(エネルギーを消費しながら自発運動する人工物の系や,微生物・細胞などの生物由来の系)に対しても,近年物理学的な視点から定量的実験が行われるようになってきた.外力や環境の変化によって非平衡状態がもたらされる通常の系とは異なり,構成要素の自発的運動によってアクティブマターは初めから強い非平衡状態にある.これらの系では特異な集団運動がしばしば出現するが,その物理的な機構や役割に対する理解はほとんど進んでおらず,計算科学的アプローチに期待が集まっている.最近のシミュレーションによる先駆的な試みにより,生体組織内部で見られる細胞の複雑な集団運動が簡単な機構で起こり得ることが示されつつあり,今後の発展に注目したい.本稿では,アクティブマターのモデリングに関する我々自身の研究例として,マイクロスイマー(粘性流体中を泳動する微生物や人工物)の集団運動,及び基板上で遊走・増幅する細胞の集団運動について概要を紹介する.

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