著者
網谷 龍介
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_78-2_98, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
33

本論文は, 議会制デモクラシーをめぐるわれわれの理解について, 歴史的な視点から再検討を行うものである。現在, 民主政の経験的研究においては, 「競争」 を鍵となるメカニズムとするのが通例である。本論文はこのような想定を相対化し, 「競争」 ではなく政党による社会の 「統合」 と, そのような政党が多数決を行うためにうみ出す 「妥協」 が, 20世紀ヨーロッパの議会制民主主義の核となるメカニズムであった可能性を指摘する。具体的には, まずオーストリアの国法学者ケルゼン (H. Kelsen) の民主政論が検討され, 20世紀政党デモクラシーの理論的存立構造の一つのモデルが提示される。そして, 彼の議論が単なる理論にとどまらず同時代の現実の政治制度や政党における議論にも対応物を持つことが明らかにされる。現状分析に持つ含意としては, 制度のみでは担保できない社会的 「統合」 のような諸条件に民主政の機能が依存していることが示唆される。

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もちろん「理論」なので現実に対応物がなくてもかまわないのでしょうけれど,「組織政党デモクラシー」を救わない政党擁護論とは何なのか,とは昔から思っている.ということで以前に書いたのがこちらでした.https://t.co/tcxPEosrRW
いわゆる「多数決主義majoritarianism」とはその点異なるし,決してmandate theoryのようなものを考えているわけではない.……というようなことを昔かきました.https://t.co/tcxPEosrRW
@rekisilove1 ドイツ社民党が、中道化して支持層を広げたかという点については議論があるようですね。 党改革以降も、政権交代時でさえ自らの旧来の支持基盤の動員に依っていた、「包括政党」というのは名目的なものであったということのようです。 90ページあたりです。 https://t.co/0JID7hYsxP

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