著者
簡 月真
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.61-76, 2006-04-01 (Released:2017-07-28)

本稿では,台湾でリンガフランカとして用いられている日本語を対象に,一人称代名詞の運用の実態およびその変容のメカニズムの究明を試みる。台湾高年層による日本語自然談話に日本語一人称代名詞のほかに閩南(びんなん)語一人称代名詞の使用が観察された。これは,日本語一人称代名詞の形式面と運用面の複雑さを回避するために,形式と運用規則が単純でかつ優勢言語である閩南語一人称代名詞が採用された,いわゆる単純化の結果である。ドメイン間の切換えから,閩南語一人称代名詞は台湾高年層のin-group形式の役割を果たしていることがわかる。ただし,日本語能力の低いインフォーマントの場合,日本語一人称代名詞への切換えはない。ドメインおよびインフォーマントの日本語能力に応じた使用の連続体から,閩南語の一人称代名詞は連体修飾語の場合に現れやすい傾向があること,言語構造面の単純化と連動して言語行動面においても単純化が漸次的に進行しつつあることが指摘できる。独自の体系を持つ台湾日本語は,日本語の変容のあり方を探るための貴重な例となっている。

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@izumi20200402 https://t.co/3e7QectIwG ◆簡 月真「日本語を上層とする宜蘭クレオールの人称代名詞」2018 https://t.co/3l7K3ChgMb ◆加藤 恵梨「二人称代名詞「あなた」「あんた」「おまえ」「きみ」について」2019 https://t.co/JGXBuowmxk 台湾の場合、植民地下での言語という背景があったのでしょうか。
これ、面白い 言うならば日本語の台湾方言 https://t.co/TlwgxpGZTD

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