著者
水野 由子 山崎 力 小出 大介 高梨 幹生 小室 一成
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.484-489, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
23

目的:ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)はグラム陰性菌で,胃粘液下の上皮細胞表層に持続感染し,慢性胃炎,胃・十二指腸潰瘍,胃がん,胃MALT(Mucosa Associated Lymphoid Tissue)リンパ腫の原因となる.感染伝播の経路に関しては不明な点も多く,う歯,歯周炎がピロリ菌の病原巣として働き,除菌治療後の再感染の要因となる可能性が指摘されるものの,日本人での検討は十分でない.本研究では人間ドック受診者の歯科検診結果をもとに,ピロリ菌感染とう歯/歯周病の関連について検討した.方法:対象は歯科検診を受診した連続症例68名(34~82歳,平均59歳),胃内視鏡と胃がんリスク検診(胃がん予測因子 ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比,抗ピロリ菌抗体濃度)の結果と,う歯/歯周病との関連を統計解析した.結果:これまでの報告と矛盾なく,慢性胃炎または胃・十二指腸潰瘍ありの症例で,ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比の低下(罹患群 4.2,非罹患群 5.8,p=0.023)と,抗ピロリ菌抗体濃度の上昇(罹患群 42.2U/mL,非罹患群 8.7U/mL,p=0.015)を認めた.しかし一方,歯科検診結果の解析では,う歯/歯周病を有する症例で慢性胃炎および十二指腸潰瘍の罹患頻度が低い傾向がみられ,予測に反した.また,健常者に比べ歯周病群でペプシノゲンⅠ/Ⅱ比が高く(p=0.012),抗ピロリ菌抗体濃度が低い(p=0.020)という結果を得た.同様の傾向は,う歯群でも認めたが,統計学的有意差は得られなかった.結論:本検討では,う歯/歯周病と胃・十二指腸ピロリ菌感染の関連は見出されなかった.今後,症例数を増やすなどさらなる検討が必要である.

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