著者
大澤 真幸
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.21-36, 2000-06-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
18

人間を人間たらしめている条件は何か? われわれは、それを「原的な否定性」の成立に見ることができる。「原的な否定性」とは、始発的な禁止、根拠を問うことができない禁止のことである。それぞれの原的な否定性がその妥当な効力を発揮しうる範囲が、社会システムの境界を定めている。それゆえ、原的な否定性の起源を問うことは、人間的な社会性の起源を解明することでもある。本稿は、そうした探究のための準備作業である。社会生物学は、「利己的な遺伝子」の理論によって、動物個体の間に、原始的な社会性が一般に成立しうる、ということを論証してきた。人間に固有な〈社会性〉は、こうした原始的な社会性との差分によって定義することができる。ここでは、二つの供儀的な殺害行為を対照させることで、すなわちチンパンジーの子殺し行動とキリストの殺害とを対照させことで、完全に人間に固有な〈社会性〉が、第三者の審級を超越的な準位へと分離することの成功によって画される、という仮説を導き出す。チンパンジーの子殺し行動は、―これと機能的に等価な代替関係にあるボノボの特殊な性行動の機能を考慮に入れてみるならば―第三者の審級の投射に反復的に挫折する営みとして解釈することができる。それに対して、キリストの磔刑は、第三者の審級を投射する機制を「脱構築」するものである。両者は、事前と事後の両側から、第三者の審級を投射する機制の実態を照らし出す。

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