- 著者
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鈴木 努
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.1, pp.49-62, 2018 (Released:2019-02-01)
- 参考文献数
- 38
社会ネットワーク分析において指数ランダムグラフモデル(Exponential Random Graph Models: ERGM)や経験的ネットワーク分析のためのシミュレーション手法(Simulation Investigation for Empirical Network Analysis: Siena)といった統計的ネットワーク分析の手法の適用が広まってきている.本稿ではこれらの手法の特徴を概観し,社会ネットワーク分析におけるその意義を検討した.統計的ネットワーク分析の手法には,ネットワークに含まれる頂点や頂点対の諸特性が頂点間の結合に与える効果を多変量モデル化し,その統計的有意性を検定することができるという利点がある.近年の統計パッケージの整備によって,その実データへの適用は容易になってきているが,その意義については社会構造の解明という社会ネットワーク分析の目的にとっては限定的であるという疑義もある.本稿では統計的ネットワーク分析が主にミクロなネットワーク特性に着目しており,マクロなネットワーク特性をモデル化しにくい点,頂点結合に対する諸効果の一様性を仮定している点を指摘したうえで,社会ネットワークの形成,発展,衰退といったプロセスの分析に統計的ネットワーク分析を適用することを提案した.