著者
加賀 佳美
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.243-249, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
48
被引用文献数
1

注意欠陥・多動性障害 (attention deficit/hyperactivity disorder; ADHD) は, 近年症例数の増加に伴い, 均てん化された診断と治療や介入法の確立が急務となっている. 現状のADHD診断は質問紙などを用いて保護者から聞き取り, 問診や診察を通して下される. しかし質問紙は主観的な評価に基づいているため信頼性に乏しい. 従って客観的評価が可能な神経生理学的バイオマーカーの開発が重要と考える. 本稿は非侵襲的脳機能検査法のうち頭皮上脳波の周波数解析, 事象関連電位 (ERP) や近赤外線スペクトロスコピー (NIRS) の研究成果がADHD診断におけるバイオマーカーに活用可能であるかどうかをまとめた. その結果, ①覚醒安静時脳波でADHDのθ/β帯域パワー値の比率増大を診断に利用する試みがある一方, 信頼度に賛否がある点も事実である. ②ERPのうちP300, NoGo電位やmismatch negativityはADHDの診断や薬物効果判定に用いられている. ③NIRSは装着が簡単で, 特に前頭部皮質の計測が行いやすい. 幼児から学童の前頭葉機能評価に適しており, ADHDの認知特徴 (不注意, 実行機能) の評価に長けている. 以上のように, 脳波, ERP, NIRSはADHDの神経生理学的state markerとしての可能性があり, 診断補助, 重症度判定, 治療効果判定等に活用されると考えられる.

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J-STAGE Articles - 注意欠陥・多動性障害児における神経生理学的バイオマーカー https://t.co/jyryXPpUFv 事象関連電位などの脳波や、近赤外線スペクトロスコピーなどの手法について書かれています
ADHDの診断法は客観的なバイオマーカーで、かつ非侵襲的であるほど望ましい。 脳機能検査法のうち頭皮上脳波周波数解析事象関連電位(ERP)や近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)の研究成果がADHD診断におけるバイオマーカーに活用可能であるかどうかをまとめた論文 https://t.co/LEqjlb60nK

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