- 著者
-
山口 進
- 出版者
- 公益社団法人 日本油化学会
- 雑誌
- オレオサイエンス (ISSN:13458949)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.7, pp.283-288, 2012 (Released:2015-02-01)
- 参考文献数
- 20
最近のいくつかの研究はアラキドン酸(AA)が食品の美味しさを向上させる効果があることを示唆している。少量のAA含有油脂を植物油脂に添加し,コロッケや炒飯,野菜スープの調理油として使用したところ,それらの食品は通常の植物油脂で調理した時と比べ,うま味やコク味や後味が向上した。 また,鶏肉の味はその鶏にAA を給餌することよって改良できる。鶏肉中のAA含量はその鶏に給餌する餌中のAA含量に比例して増加し,餌によってAA含量が異なるように調製した鶏肉を官能評価したところAA含量の高い鶏肉は低いものより,うま味やコク味が高まった。このようなAAによる食品の美味しさ向上効果のメカニズムを考察するため,本総説ではAAが味覚感知に影響を及ぼすことを示す研究例をいくつか紹介した。その1つとして,マウスを用いた実験によりAA酸化生成物がうま味成分であるグルタミン酸ナトリウムや甘味成分であるショ糖に対する味覚感受性を増強したことが示されている。これらの研究成果は油脂や脂肪酸が食品の味を感じる上で果たす役割の理解や,より美味しい食品の開発への応用に有用であると考える。