著者
舩木 理悠
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.18-31, 2017 (Released:2018-10-15)

エルネスト・アンセルメ Ernest Ansermet (1883~1969)は、著作『人間の意識における音楽の諸基礎(Les fondements de la musique dans la conscience humaine, 1961)』で、音楽に関する現象学的理論を展開し、人間の意識の観点から音楽の説明には音楽的対数が必要と主張し、また、著名な指揮者であるアンセルメは著作の中で演奏者による解釈にも言及している。だが、先行研究は対数に関する議論に注目し、「解釈」の問題をほとんど扱っていない。 それ故、本稿は「テクストを「解釈すること」«interpréter»が[中略]必要だ」(Ibid., t. II, 149)という主張に着目し、解釈の必要性についてのアンセルメの思索を考察する。 そのため、議論の前提として、まず、アンセルメの現象学的視点と彼の美学の主要概念である「カダンス」について確認し、これが人間の意識現象を説明するために用いられていることを示す。第二に、アンセルメにとって、解釈とはテクストの中で諸々のカダンスを捉えることであり、これらカダンスがテンポの質を規定するとされることを示す。 また、アンセルメの理論ではこれらカダンスが呼吸や脈拍といった身体的なものに規定されることから、本稿はアンセルメ美学における身体の役割を考察する。これにより、アンセルメの理論では、身体はそのカダンスの反復によって音楽的持続を測定する役割を持ち、また、「我々の現存的時間性notre temporalité existentielle」(Ibid. t. II, 133)は身体的カダンスの反復によって成立するとされることが明らかになる。以上から、アンセルメは身体と時間の関係に関する現象学的観点に基づいて解釈の必要性を主張したと結論し、身体との関係で演奏を論じる可能性を持つ理論としてアンセルメ美学を提示する。

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自分、現象学はニガテなんすよね。 何かウニョウニョしてる。 ま、そのウニョウニョが好きな人はイイんだろうけど(笑)。 前にも伝えましたが高校の頃、教師の薦めで、フッサールの有名な「厳密な学としての哲学」買いました。 読んだんですがイマイチ分からない。 当時、数学ヲタクだった自分は「厳密な」てとこに随分と惹かれたんすけどね。 フッサール自身、数学者だった訳でしょ? https://www.amaz ...

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#寝る前に論文読む こちらは音楽論を少し勉強してからちゃんと読む #メモサンド ちょうどシラーの優美→オケの指揮者の身体について考えてたので助かります https://t.co/pmX2QOvl1e
J-STAGE Articles - エルネスト・アンセルメの音楽美学における解釈と身体――現象学的身体論としてのアンセルメの音楽美学―― https://t.co/uPn9mHXrYA

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